中小企業の経営者、業務担当者のためのパソコン活用による業務改善マニュアル



パソコンのサポートをしている山本です。
パソコン指導、業務ソフトの導入指導、データベース構築などの経験から得た、中小企業におけるパソコン活用、業務効率アップのヒントをお届けします。





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■Access でシステム構築

「販売・仕入ソフト導入」でご紹介した会社の業務に「レンタル管理」がありました。レンタル管理は、納品日から期間計算し、期間満了後には引き上げ処理が必要なので、Accessでシステムを構築することになりました。その時の経緯をご紹介します。

Access の習得

私は、導入企業のシステム責任者の部長さんから「レンタル管理」はAccess で作ってほしいと言われた時、少し戸惑いました。

私はセミナーでAccess初級講座を教えたことはありますが、実際にシステム構築した経験が無かったからです。初歩の講習なら少し勉強すれば教えることもできますが、システム構築はそうはいきません。

でも、ここはAccess を習得するチャンス!という気持ちもありました。
その部長さんは、カード型データベースソフト「File Maker」を独学で習得し、システム構築までされた方なので、データベースソフトはどういうものかを理解していたのだと思います。

私は、Accessでシステム構築した経験のないことをお話しました。
また、作ったことがないのでどのくらい時間がかかるかも分からず、見積りも出せません。そこで、掛かった時間で支払うという有難い言葉に、私もシステム構築を決心しました。

●セミナーの受講
システム構築すると決まったら、まずAccessの習得です。初級程度は教えていたので、中級・上級のセミナーを探して受講しました。ソフトを習得するには、セミナーが一番の近道と考えているので、迷わず探して受講しました。

●参考書
次に、Access の参考書を何冊か買って読みました。同じようなレベルの参考書でも載っている内容が違うので、それぞれに発見することが多いものです。

●サポートセンター
そして、一番頼りになったのがマイクロソフトのサポートセンターでした。実際にシステム構築していくと、細かい部分で分からないことがたくさん出てきます。そんな時、質問できるのがサポートセンターでした。

当時、マイクロソフトのサポートセンターは、購入後、最初に電話した日から3ヶ月間は無料で何度でも電話サポートが受けられるというシステムでした。

一つひとつの具体的な質問に答えてもらえたことは、私にとってとても勉強になりました。今思えば、サポートセンターのお陰でシステム構築できたと言っても過言ではありません。とにかく3ヶ月の間、集中的にシステム構築し、質問したメモはノート1冊分にもなりました。

今では、マイクロソフトのOffice製品(統合製品)に関する質問は、4件のみ無料でサポートしてもらえますが、そのあとは有償(マクロとVBA以外の質問は1件4,200円、マクロとVBAに関する質問は1件29,400円)となっています。今のサポート制度ではとても習得することはできなかったと思います。

システム構築への道程

Accessを習得したら、次にシステム化する業務を理解することが必要です。私は、業務を理解するために何日も何日も話を聴くため客先に通いました。聴けば聴くほど奥が深く、業務を理解することは本当に困難なことでした。

システムを構築する場合、まず大きな流れを決めてから、細かい部分を考えます。そこで問題になるのが例外処理です。手作業で処理している時はいくらでも操作できるので、つい例外処理を作ってしまうものです。

ところが、システム化する際に必ずネックになるのが例外処理です。めったに起きない例外処理をシステム化しようとすると、処理が複雑になり構築が難しくなります。構築が難しくなればそれだけ時間がかかり、費用がかかることになります。

その場合、例外処理をシステムに組み込むか、例外処理を無くしてシステムを簡素化するか、例外処理を別処理にするかをじっくり話し合うことはとても重要なことです。

業務上なぜ例外処理が必要なのかを使う側から説明し、その処理を組み込む場合システム上どんな問題があるかを作る側から説明します。お互いの説明を理解した上で、対処方法を一緒に考えていきます。これは、使う側だけで考えても、作る側だけで考えてもダメなのです。両者の説明を理解し納得しなければ良い案は出てきません。そして、最終的には導入する企業が決断します。

例外処理をなくして業務を簡素化するということも業務改善のひとつだと私は考えています。

システム構築後の動作確認

システムが構築できたら、最後にシステムの動作確認を行います。導入企業では、納品後1ヶ月位は従来通りの作業(手作業)と導入システムでの並行処理を行い結果を確認します。導入企業にとっては大きな負担となりますが、そこで動作や結果を確認することはとても大切なことです。

システムを作る際、様々なケースを想定してテストを行いますが、想定できないケースもあります。そこで、自社の業務をよく理解している導入企業がテストを行い、自分たちで納得することが重要です。

また、帳票などは納品前に事前確認しますが、実際に導入してみなければ分からないこともあります。そこで、最初の1ヶ月位は様々な問題点を洗い出していきます。その中で、システム上大きな修正が必要になる場合には、費用がかかる場合もありますが、一つひとつの問題を解決していくことで、より使い易いシステムにしていくことができると考えています。

きちっとしたシステムを作ることは構築する側の当然の役目ですが、そのシステムが仕様通り動作するかを確認するのは、導入企業の役目でもあると思っています。システム構築とは決して作る側だけの作業ではなく両者で行う共同作業だと考えています。

Access によるシステム構築のメリット

それでは、Accessによるシステム構築のメリットは何かを考えてみましょう。

 ● 自社の業務に合ったシステムができる。
 ● 業務の内容が変更になった場合、修正ができる。
 ● Access のデータを Excel に出力して活用できる。
 ● 他のプログラム言語で構築するより少ない費用で構築できる。

市販のソフトでは、自社の業務にピッタリ合ったものを探すのは大変ですが、システム構築すれば自社の業務に合ったシステムを作ることができます。また、業務が変更になった時は、修正できるという点も大きなメリットです。

また、Access でシステム構築しているとデータを簡単にExcelに変換することができます。Excelに必要なデータを変換して、グラフを作ったり、自分で自由に活用することができます。

Access と VBA(Visual Basic for Applications)を使い本格的なシステム構築を外注すれば、それなりに費用はかかりますが、Oracle や Cobol、C言語などを使って構築するよりは少ない費用ですみます。また、マクロを使いサポートを受けながら自社構築することも可能です。Access を使える人材がいる場合にはAccessを使う価値は大きいと思います。

自社の業務に合わせてシステム構築しようと考えた時は、Access でシステム構築することも選択肢の一つとして検討していただきたいと思います。

システム導入企業に聞く

この会社では、私がシステム導入・構築した以外にも様々なシステムを導入しています。今までシステム導入した中での問題点について尋ねたところ、こんな話をしてくださいました。

●規模に応じたシステム導入
この会社のグループ企業間ではデータのやり取りが多いため、大きな幹となる基幹的な処理をIBM AS/400で構築しています。そこから自社(自部門)で必要なデータを取り出し、日常的な処理に使用しています。

IBM AS/400 は大規模基幹業務を構築するデータベースソフトとして、大企業でよく使われていました。ところが AS/400 でシステムを構築すると莫大な費用がかるそうです。

この会社では以前、日常的に使用する「受注・発注業務」を AS/400 で構築したところ、システム構築費用が 2〜3千万円もかかってしまったそうです。その上、サーバー維持費も毎月10万円という具合に、とにかくお金がかかると嘆いていらっしゃいました。

システム構築料は構築する技術者の人件費で計算します。AS/400 レベルの技術者になると、1人当たり1ヶ月で100万円〜200万円になるそうです。

日常的な業務の場合、処理が変更になることがあります。そのためシステムを変更した場合でも、システム調査に1ヶ月、構築に1ヶ月、導入に1ヶ月と、1ヶ月単位で計算するので、合計で3ヶ月かかることになります。

すると、最低でも1人100万円 ×3ヶ月= 300万円 という計算になります。そんな状況では、業務変更のある日常的な業務にはとても対応しきれないということでした。

その話を聞いて私も大変驚きました。

AS/400 のシステムは処理も速く安定しているので、中規模以上のデータ処理には適していますが、日常的な業務には向かないと断言していました。日常的な業務についてはアプリケーションの導入がポイントになり、市販の業務ソフトや小回りの効く Access などを利用する方法がベストだとおっしゃっていました。

このように、業務の規模に合わせてシステム導入することが重要だということを教えてくださいました。

●技術者と現場の意識の違い
もう一つ、システム構築での問題点として、コンピュータ技術者と現場ユーザーの意識の違いを挙げてくださいました。

技術者は現場業務を十分理解せず、自分たちの論理でシステムを作る傾向があると言います。いざ、導入してみると、現場では「あーでもない」「こーでもない」と何かと問題が多いそうです。

私は、「現場を知らない技術者がシステム構築すると問題が多い」という話をよく聞いていましたが、今回は実際に導入した企業の方から生の声を聞き、その信憑性を実感しました。

システム構築する際、技術者が現場の担当者ではなく経営者や管理者など、実際に業務に携わっていない人と打合せをする場合があります。それが間違いのもとなのです。

システムを使うのは業務に携わっている現場の担当者です。その現場の担当者を交えてヒアリングしなければ、本当に使い易いシステムは出来ません。システムを構築する場合には、導入企業の業務を現場レベルで徹底的に調査した上で、システム設計することの大切さを改めて感じました。

また、後になって言った言わないのトラブルを防ぐためにも、打合せ内容や決定事項、システム設計書はきちっと文書化して導入企業の了解を得ることは、システム構築側にとって必要な作業だと思います。

いろいろ貴重なお話を聞かせていただき、導入企業側から見たシステム導入のポイントや問題点を知ることができました。

このお話は、今後システム導入を進める上で参考にさせていただきます。
また、 これから自社システムを構築しようという企業の方の参考になれば幸いに思っています。


 
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