仲良し時間

もう30年以上も前になりますが、知人の方から亡くなる前の「仲良し時間」の話を聞いたことがあります。

病気で亡くなる前に、病状が落ち着いて話ができる状態になることがあり、その時に、シスターが病室に入り、その人の話を聞くというのです。今まで生きてきて誰にも話すことができなかったこと、懺悔など、そうした話をして安らかに旅立つというのです。

20年程前、父が近くの総合病院に入院し危篤になった時、横浜に住む妹夫婦が4人の子供達を連れて病院に駆け付けました。家族全員、孫たちに囲まれ父は嬉しそうに笑っていた光景を今でもはっきり覚えています。

それまでは酸素マスクをしていたのに、その時だけは元気で孫に話しかけていました。そして、その夜に亡くなりました。

あの時は、まさに「仲良し時間」だったのだと思いました。

そして昨年、以前お世話になった方が亡くなったことを喪中はがきで知り、お悔やみのお手紙とお線香を奥様にお送りしました。すると、奥様からお礼のお手紙をいただき、「娘や孫も来ており賑やかにしているのを嬉しそうにしていました。そんな時眠るように逝ってしまいました」とありました。
ああ、仲良し時間を過ごしたんだと思いました。

母が介護施設から病院に救急搬送される前、母には仲良し時間があったのだろうか。

私は、母の具合が悪いので木曜日と金曜日に施設に行っていましたが、その時は、とても辛そうでした。
土曜日は姉が母のもとに行き、日曜日には妹が行きました。
妹は、その時母といろいろ話をして元気だったと言っていました。
その話を聞いて、私も一緒に行けば良かったと思いました。

そして火曜日の朝、容態が悪くなり救急搬送されたのです。
妹と話していた時が、母にとっての「仲良し時間」であったら良いなと思っています。

とても不思議なことですが、神様は亡くなる前に「仲良し時間」を作ってくださるのだと思います。そんな穏やかな時を過ごせたら、逝く人も送る人も幸せだと思います。

<補足>
「仲良し時間」という言葉は、聖心大学教授であったシスター鈴木秀子さんの著書の中で使われている言葉です。
●鈴木秀子さんのオフィシャルサイト http://www.srsuzukihideko.com/index.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。